大地のコレクション展2022

椛田 ちひろ

椛田 ちひろ 1978 -

椛田 ちひろ 1978 -

黒色ボールペンでインクジェット紙などの上に不定形なかたちを描くことで知られる作家。ボールペンの動きは繊細かつ力強く、独特の質感が海外でも人気を博し、これまでシンガポール、中国、スイスなど様々な場で展覧会が行われてきた。最近の個展では石を置いて光をあて、多方向にできる影をボールペンでトレースし、石が辿ってきたみえない時間を視覚することに成功した。ボールペンのほか、指と手で描く油彩画、樹脂を鏡の上に垂らすドローイングなども手掛け、表現の幅を広げるだけでなく、自身のボキャブラリーを駆使して空間をつくっていく可能性を模索し続けている。

■略歴
1978 福岡県生まれ
2004 武蔵野美術大学大学院修士修了

■主な個展
2017 椛田ちひろ展 -見知らぬ惑星 アートフロントギャラリー / 東京
2015 椛田ちひろ展 -Following the Shadow アートフロントギャラリー / 東京
2013 椛田ちひろ展 - 影をおりたたむ アートフロントギャラリー / 東京
2013 A drift in the Dark(Kashya Hildebrand/スイス )
2012 今、甦り、絶えず過ぎ去ってゆく(H.P.FRANCE ウィンドウギャラリー丸の内 / 東京)
2011 目をあけたまま閉じる( アートフロントギャラリー / 東京)
     fear/ flight/ fleeting( ラサール芸術大学シンガポール現代芸術研究所 / シンガポール)
    成層圏 Stratosphere vol.1 椛田ちひろ「私」のゆくえ(ギャラリーαM / 東京)
2010 境界の先の光景( 遊工房アートスペース/ 東京)
    事象の地平線( 新宿眼科画廊 / 東京)
    パラダイムクロッシング(Nroom artspace / 東京)
2009 アンユナイティ(遊工房アートスペース / 東京)
   シュヴァルツヴァルトメトリック (アトランティコギャラリー / 東京)
2008 フレームワーク (ギャラリー・グランカフェ /東京)
    スーパーポジシオン-トリプティク (遊工房アートスペース / 東京)
    スーパーポジシオン (アートトレイスギャラリー / 東京)
2006 椛田ちひろ個展 (アートトレイスギャラリー / 東京)

■主なグループ展
2020 日本の美術を貫く 炎の筆<線> ー火焔土器からまゆ毛までー(府中市美術館/東京)
2019 FACE展 2019(損保ジャパン日本興亜美術館 / 東京)
    第1回タガワアートビエンナーレ「英展」(田川市美術館 / 福岡)
2018 クラークキー オルタナティブ (INSTINC / シンガポール)
2015 単位展 / 21_21デザインミュージアム
2014 ジャパン・アート・エキシビジョン (伊勢丹 / シンガポール)
   Parallel Perception & Counter Connection( ジャパン・クリエイティブ・センター / シンガポール)
   ゾーン・エクリプス(INSTINC / シンガポール)
2013 P.O.V. (Galerie Steph / シンガポール)
2012 現に奇しく- Unknown Landscape -(G-WING'S gallery / 金沢)
    The White Line 5cm Wide(南ソウル大学アートセンターギャラリーIANG / 韓国)
明らかな白-Observer of Celestial Sphere-(Gallery Valeur / 名古屋)
現代美術の展望VOCA展2012-新しい平面の作家たち(上野の森美術館 / 東京)
あざみ野コンテンポラリーvol.2 Viewpointsいま「描く」ということ(横浜市民ギャラリーあざみ野 / 神奈川県)
2011 アートラインかしわ2011(三井ガーデンホテル柏2F / 千葉)
    SHIFT←311 3.11以後の9人の現代アート(アートカフェGBOX / 広島)
   The 6th International Invitational Exhibition / NATURE. HUMAN. CULTURE(南ソウル大学アートセンター/ 韓国)
   MOTアニュアル2011「世界の深さのはかり方」(東京都現代美術館 / 東京)
2010 The 5th exhibition of the 21c inetrnational arts & culture exchange association (平澤湖美術館 / 韓国 )
    千代田芸術祭 3331アンデパンダン (アーツ千代田3331 / 東京)
    Art Trace Gallery group exhibition 7 (アートトレイスギャラリー / 東京)
   箱庭と黒い森(アートフロントギャラリー / 東京)
2009 ダイナマイト0000(キタノスタジオ / 東京)
   新しい抽象絵画展(Nroom artspace /東京)
    Presentation & Exhibition2009(アートコートギャラリー / 大阪)
   The Zibo international exhibition(Zibo museum / 中国)
    断続的対話(アートトレイスギャラリー / 東京)
    Market Trace 2009(アートトレイスギャラリー / 東京)
   アーティクルアワード2009受賞記念展( アトランティコギャラリー / 東京)
    アーティクルアワード2009(クムサンギャラリー /韓国・東京画廊+BTAP / 中国・デザインフェスタギャラリー / 東京)

■主なグループ展
2020 日本の美術を貫く 炎の筆<線> ー火焔土器からまゆ毛までー(府中市美術館/東京)
2019 FACE展 2019(損保ジャパン日本興亜美術館 / 東京)
    第1回タガワアートビエンナーレ「英展」(田川市美術館 / 福岡)
2018 クラークキー オルタナティブ (INSTINC / シンガポール)
2015 単位展 / 21_21デザインミュージアム
2014 ジャパン・アート・エキシビジョン (伊勢丹 / シンガポール)
   Parallel Perception & Counter Connection( ジャパン・クリエイティブ・センター / シンガポール)
   ゾーン・エクリプス(INSTINC / シンガポール)
2013 P.O.V. (Galerie Steph / シンガポール)
2012 現に奇しく- Unknown Landscape -(G-WING'S gallery / 金沢)
    The White Line 5cm Wide(南ソウル大学アートセンターギャラリーIANG / 韓国)
明らかな白-Observer of Celestial Sphere-(Gallery Valeur / 名古屋)
現代美術の展望VOCA展2012-新しい平面の作家たち(上野の森美術館 / 東京)
あざみ野コンテンポラリーvol.2 Viewpointsいま「描く」ということ(横浜市民ギャラリーあざみ野 / 神奈川県)
2011 アートラインかしわ2011(三井ガーデンホテル柏2F / 千葉)
    SHIFT←311 3.11以後の9人の現代アート(アートカフェGBOX / 広島)
   The 6th International Invitational Exhibition / NATURE. HUMAN. CULTURE(南ソウル大学アートセンター/ 韓国)
   MOTアニュアル2011「世界の深さのはかり方」(東京都現代美術館 / 東京)
2010 The 5th exhibition of the 21c inetrnational arts & culture exchange association (平澤湖美術館 / 韓国 )
    千代田芸術祭 3331アンデパンダン (アーツ千代田3331 / 東京)
    Art Trace Gallery group exhibition 7 (アートトレイスギャラリー / 東京)
   箱庭と黒い森(アートフロントギャラリー / 東京)
2009 ダイナマイト0000(キタノスタジオ / 東京)
   新しい抽象絵画展(Nroom artspace /東京)
    Presentation & Exhibition2009(アートコートギャラリー / 大阪)
   The Zibo international exhibition(Zibo museum / 中国)
    断続的対話(アートトレイスギャラリー / 東京)
    Market Trace 2009(アートトレイスギャラリー / 東京)
   アーティクルアワード2009受賞記念展( アトランティコギャラリー / 東京)
    アーティクルアワード2009(クムサンギャラリー /韓国・東京画廊+BTAP / 中国・デザインフェスタギャラリー / 東京)

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《記憶に留められた語り》2019

今回大地の芸術祭コレクション展に出展された"記憶に留められた語り"は、スイス、チューリッヒでの個展を境に色のあるボールペンを本格的に使って作品を作り始めたころの作品です。「文房具屋に行くと黒と赤のボールペンだけでなくありとあらゆる色のボールペンが並んでいる。もはやあの青みを帯びた黒い色はボールペンという素材においてステレオタイプな色でなくなっているのかもしれない。」と作家は回想しています。

明確なフォルムをとるに至ったモノトーンの作風から、色を使うことで椛田の作品世界は再び、明確な輪郭を失なっていったように思われます。と同時に、本来この作家にあった即興的で曖昧な部分を取り戻しつつ、色彩をコントロールすることで作品の可能性が大きく広がっていったのではないでしょうか。

《拡張してゆく空想》2021

もう一つの作品、”拡張してゆく空想”は、黒い四角形についての記憶と考察であると作家は語ってます。この作品について作家コメントを紹介します。

「2020年、BLMの運動がインスタグラム上で盛んになったとき、黒い正方形の画像が溢れた。この"BlackoutDay"というイヴェントには賛否両論あるが、そうしたイデオロギーの問題とは関係なく、個人的にショックを受けたということがある。実にくだらないと思われるかもしれないが、自分の絵画作品は真っ黒な正方形のようであることがしばしばあるのだ。
正方形という形も、上下左右を回転させて制作する自分のスタイルにあっていたことや、正方形を意味のないニュートラル形として正方形を気に入っていたから、ニュートラルではなくなった黒い正方形の群を見て、本当に落ち込んだ。
"Black out Day"に限らず、インスタグラムが採用したスクエアという形は今やインスタグラム上のこのスクエアはしばしばイデオロギーを拡散させるために使われる、特別なメディアという感じがする。
どうにも黒い四角にしか見えない作品かもしれないが、歩いて作品に寄り、顔を近づけて初めてこの黒い四角は線の塊だった気づくだろう。」

《ゆく水の家》2022年 大地の芸術祭2022 photo Kioku Keizo

《ゆく水の家》は、椛田ちひろの初めての芸術祭参加作品で、市ノ沢集落にある古民家が舞台となっています。
この土地は山の中にあって近くに川が流れ、他の土地へとつながる道もある。豪雪地帯で住んでいる人々の歴史など、土地にまつわるたくさんの物語があります。
椛田はそうした物語を見聞きして、試行錯誤をしながら旅人なりの小さな物語を作りました。旅人の目から見た、この素敵な土地の素敵な物語を共有したい気持ちで作られたのがこちらの作品です。

実際、市ノ沢集落は山の中、当間川と市ノ沢のすぐそばにあって、会場の家にいるといつも流れゆく水の音が聞こえます。家から聞こえる流れる水の音を想いながら障子紙にボールペンで流れを描き、ポリカーボネートの波板を熱で変形させて流れを表現し、家の中に川を作り、観客が眺められるように木道をこしらえました。
耳をすませば聞こえてくる実際の川の音とともに、ボールペンと波板の二つの流れを鑑賞していただくことで、当間川と市ノ沢のすぐそばにある市ノ沢集落の物語を、作品のなかで再発見してもらえると嬉しいです。

《ゆく水の家》初期プラン ©椛田ちひろ ©Chihiro Kabata

また、夏会期から公開される2階の作品は、彼女の旧作《千の頂を探して》(2019)が原案となっています。
「《千の頂を探して》は、実際に登頂した山から石を拾い、その石から記憶の姿を引き出す。山の幽霊と呼んでもいい。私は絵を描きながら再び山に登り、再び石に戻る。

本作では、集落に借りた石や川で拾った石を使う。集落周辺を実際に歩いたり登ったりした体験を絵画にし、それらを繋ぎ合わせて山の幽霊を作る。冬に集落を訪れた時の雪が忘れられないから、幽霊は実際の当間山の姿とは異なる姿になるでしょう。」と作家が語っているように、土地の四季に想いをめぐらせた作品をお楽しみください。

大地の芸術祭 出展作品

拡張してゆく空想
2021
1400x1400 mm
紙にボールペン
記憶に留められた語り
2019
1000 x 1000 mm each
紙にボールペン

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