大地のコレクション展2022

カールステン・ニコライ

カールステン・ニコライ 1965 -

カールステン・ニコライ 1965 -

視覚芸術の活動とならび、アルヴァ・ノト(alva noto)の名前で電子音楽を制作発表しているドイツのアーティスト。1999年にレーベルraster-notonを設立し、多様な実験音楽の作品をリリースする傍ら、坂本龍一、池田亮司とのコラボレーション「cyclo」や、他のミュージシャンとの共演でも国際的に知られる。2005年にドイツ国内2ヵ所で開催された包括的な個展の他、ドクメンタⅩ(1997)、第49回・50回ヴェネチア・ビエンナーレ(1999, 2001)など国際展への参加多数。2012年から2013年にかけて、大規模な映像インスタレーション《unidisplay》がモントリオール、ミラノ、フランクフルトを巡回した。国内では山口情報芸術センター[YCAM]での個展(2010)のほか、越後妻有アートトリエンナーレ(2003, 2012)、第4回ヨコハマトリエンナーレ(2011)などに参加している。2014年文化庁メディア芸術祭アート部門大賞受賞。アーティスティックな形態とアプローチの統合を目指すニコライは、グリッド、コード、エラー、ランダムや自己生成構造といった科学的なシステムや数学的パターン、記号論を応用する。2015年12月、ギャラリーでbausatz noto というレコードプレイヤーを組み合わせた作品を展示した。

■ 略歴
1965 カール=マルクス=シュタット(旧東ドイツ), ドイツ生まれ
現在ドイツ・ベルリン、ケムニッツ在住

■ 主な個展
2013 Empty Garden the Hole Gallery、 プラハ、チェコ共和国
Crt Mgn  Galerie Eigen + art 、ベルリン、ドイツ
Observatory  ibid projects、ロンドン、イギリス
2012 Unidisplay Mmusée d'Art Contemporain、モントリオール、カナダ / ミラノ、イタリア
2011 Pionier, cac, vilnius, lithuania galerie eigen + art, ドイツ / Pace Gallery、アメリカ
Filter, House of Art チェスケー・ブジェヨヴィツェ、チェコ共和国
2010 Polar m [mirrored] with マルコ・ペリハン YCAM、 山口、日本

■ 主なグループ展
2015 シンプルなかたち展:美はどこからくるのか 森美術館、東京、日本
2013 第17回 文化庁メディア芸術祭 国立新美術館、東京、日本
Soundings: a Contemporary Score MoMA、 ニューヨーク、アメリカ
Arctic Louisiana Museum of Modern Art、コペンハーゲン、デンマーク
2012 Sound Art. sound as a medium of art ZKM、カールスルーエ、ドイツ
   大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2012 新潟、日本
アートと音楽―新たな共感覚を求めて  東京都現代美術館、東京、日本
2011 Our Magic Hour, 横浜トリエンナーレ2011 神奈川、日本
2010 Seconde nature fondation vasarely、 エクス・アン・プロヴァンス、フランス
万華鏡の視覚  森美術館、 東京、日本

もっと見る

旧東ドイツのカールマルクスシュタットに生まれたカールステン・ニコライ(1965-)は、大学でランドスケープアーキテクチュアを専攻。卒業後は都市のデザインを手掛けていましたが、90年代に美術家としてベルリンで活動を始めました。1997年には早くもその才能を認められ、カッセルのドクメンタXに出展します。その後も欧米各地で展覧会を開く一方、アルヴァ・ノトの名前で電子音楽でも知られるようになり、ファクシミリ音やクリック音にまで音楽の領域を広げるなど視覚アートと音楽の世界を自由に行き来しながら活動の場を広げてきました。

 日本では、ワタリウム美術館、キャノンアートラボなどで観客とのインタラクティブな作品を発表、2003年には越後妻有アートトリエンナーレの川西エリアにサンレコーダーを設置。これは3年間のこの地における日照時間を計測して保管するもので、客観的事実の記録を通してパターンがみえてくるといいます。

《Wellenwanne LFO》2012、越後妻有里山現代美術館 MonET

さらに2012年の芸術祭では信濃川流域で感じた水やその波動に着目し、水槽に入った水の波紋が周波数の変化を受けてスクリーンに投影される作品 Wellenwanne LFO をつくり、これは現在、里山現代美術館 MonETの常設作品として見ることができます。周波数の変動により変化する波紋が鏡に反射して映し出されるプロセスは、作家の言葉を借りれば「無作為の行為」であり、そういった無作為をコントロールしたり分析したりすることが可能なのか、問い続けながら次々と新しい作品を生み出しています。

《chroma wellenform》2015

そして、今出品されている作品《chroma wellenform》シリーズは、予測不可能なランダムな事象を写し取りつつも、それが自然界ではなく無機質な機械の動作の軌跡が視覚化されていることが特筆すべき点として挙げられます。《chroma wellenform》シリーズは、スキャナーのスキャニングの動きの軌跡をフィルムに写し取った作品になります。カールステンが「スキャノグラフィ」と呼ぶこの技法で撮られた作品は、様々な異なるメーカー・型番のスキャナーによって一つとして同じもののない、有機的な光と色のバリエーションで我々を楽しませます。

《Fades》2006

もう一つの出展作品は映像作品でシューという高い音と光の波形が変化し続けるビデオインスタレーションです。このビデオでは、絶えず移動する線形および対数波変調に基づく光の勾配を示しているため、様々な形状や構造が作成されます。空間内の光の彫刻でもあり音楽のフェードと同様に通常の理解システムを超えて機能する視覚言語を示しています。

カールステンはこのほか幾何学的なモニュメンタルな彫刻作品もいくつか手掛けており、日本でも鳥取の某企業の研修施設外構などに設置されその姿を見ることができます。ポリライトと呼ばれるこのシリーズは昼間は鏡で出来たシャープな立体作品として、周りの風景をその本体に映し出しますが、夜になると一転し、内部のライトが光ることで内部の構造が浮かび上がりスケルトン状態の彫刻作品へと変化します。

chroma wellenform (scan 10)
2015
580x420mm
ピグメントプリント

トップに戻る