Collections of Echigo-Tsumari Art Triennale 2022

Kenjiro Okazaki

Kenjiro Okazaki 1955 -

Kenjiro Okazaki 1955 -

Selection by Osamu Ikeda, former director of BankART1929

Born in 1955 in Tokyo. Artist and critic.
In addition to creating works that transcend genres such as painting, sculpture, video, and architecture, he has continued to write art criticism. Since being invited to the Paris Biennale in 1982, he has participated in numerous international exhibitions, including a major solo exhibition at the Sezon Museum of Contemporary Art in 2002. He has also been involved in a wide range of activities, including participation as director of the Japanese pavilion at the 8th Venice Biennale of Architecture held in the same year. Many of his works are in museum collections.

1982年パリ・ビエンナーレ招聘を皮切りに、Asian Cultural Council の奨学金により渡米、全米各地の建築や美術館を巡った。ヒルサイドギャラリーにて1988、1991年に幾何学的な立体の個展を行い、ファーレ立川には6個の換気口をカラフルな金網構造で覆う作品を恒久設置で制作した。2002「ヴェニス・ビエンナーレ第8回ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展」では日本館のテーマ展示《漢字文化圏における建築言語の生成》でディレクターを務めた。また公共のプロジェクトとして「灰塚アースワークプロジェクト」(1994-2003年)が挙げられる。これは広島市の灰塚ダム建設を契機として、三つの町が共同で立ち上げたプロジェクトでダム周辺の整備と文化振興をアートで推進することをめざしたもので岡﨑は長期にわたり相談役として関わった。

ヒルサイドギャラリー展示風景 1991 Photo by Jun Morioka  

《間違えもせず、手探りもしないで、まっすぐ食卓の上に手を伸ばす。それから、また壁に手を触れないで、三度跳んだら部屋の外だったが、扉を閉めるのを忘れていた。》2014  FRP  courtesy of BankART1929

今回、《大地のコレクション展》に出品される本作品は、池田修・BankART1929元代表(2022年3月16日逝去)が生前本展のためにセレクションしたものである。

作家より、本展のためにコメントを寄せていただいた。
「彫刻の歴史にとって人体が特別なモチーフでありつづけたのは、その外(から見た)形によるのではなかった。
 たとえば(人間を含めた)動物の体の運動を考えてみよう。たとえ個別の人体部位、筋肉だけが動いているように思っていても、小さな指の先だけを動かしても、実際は他のさまざまな筋肉が連動して動く、つまるところ体のすべての部位、筋肉はかならず連動している。その意味で身体はひとつの連続した運動装置である。
 たとえば右手の小指と親指が食卓の端にあるサクランボを摘もうとするとき、実際は上腕、手首、肘、二の腕、肩、肩甲骨、さらには腹斜筋、腰骨それを支える下肢のすべてが連動して動く。そしてわたしたちの体はその連動をひとつの動きとして把握している。この把握は内触覚=内臓的感覚といってもいい。小指と親指だけがサクランボを摘んでいると理解しているのは目だけである。いや、サクランボを目が捉えたとき、すでにわたしたちの体は動き出し、その連動ははじまっている。視覚的に捉えられないといったが、わたしたちはそれを美しい運動曲線としてイメージする。そして実際に効率的に運動が行われるとき力学的必然をおびて、身体全体がその運動曲線に沿っているように現れもするのである。
 この彫刻の元になったのはこんな発想だった。三つのそれぞれ独立した固有性(キャラクター)を持った形は互いに規定しあって連続した形態を作り出す。あるいはひとつの連続した大きな円弧(傾いたシリンダー)が三つの個性的形態を一つに連続させ=納めている。三つの形態は(親指、人差し指、中指のように)手の甲を丸くすぼめ、その内側にサクランボをきっと掴んでいる(のかも)。」

故池田氏と自宅近くを散歩している岡﨑乾二郎氏 courtesy of BankART1929

池田氏は、2014年の田中信太郎+岡﨑乾二郎+中原浩大「かたちの発語展」展に寄せて次のような言葉を遺している。

岡﨑乾二郎は、初期の発泡スチロールの小さなレリーフから始まり、ポリプロピレンを用いての不定形の彫刻やパッチワーク形式の大きな平面作品、幾何学のエレメントを用いながらもゆったりとしたフォルムの立体作品、粘土、石膏をもちいた力強いボリュームのある作品、1992年ごろから多彩に継続している絵画等、次々と表情豊かな作品群を表出してきました。
また、コミッションワークやランドスケープデザイン、建築設計等、仕事のスケールが大きくなっても、コンセプトと色彩と形はぶれることなく、その自由さと緻密さは保持され、多様な表現を展開してきました。さらにBゼミスクールから、四谷ARTSTUDIUMなどにかけての教育活動へ、刺激的な論考や雑誌、絵本やマンガ等による視線は、美術のみならず、建築、社会にも強い影響を与え、多くのファンを獲得してきました。

Kenjiro OKAZAKI (田中信太郎+岡﨑乾二郎+中原浩大「かたちの発語」展 個別カタログ 2014 BankART1929発行より抜粋)

Echigo-Tsumari Art Field

Without mistake, without any fumbling, I reach my hand straight out on the dinner table. And then, again, without touching the wall, three steps took me out of the room, but I had forgotten to close the door.
2014
1980 x 3400 x 1900 mm
FRP

Top